酒に酔って傷害を負わせた被疑者の弁護人に選任され弁護活動を行いました。被疑者は医師として病院を経営し、かつ、積極的に公的活動に励むいわゆる地元の名士であったため、事件が公になれば患者や知人の信頼を失う危険がありました。
事件が公になることを避けるためには不起訴処分あるいは罰金処分にとどめること、また、できる限り早期に事件を終了させることを目的に弁護活動を行うことにしました。
しかし、被害者との示談交渉において、被害者から明らかに不当な要求が出されたことから示談締結の可能性は乏しいと判断し、被疑者本人が犯行を深く反省していることは当然として、飲酒が主な原因であることから、被疑者本人の断酒、断酒に対する家族の監督が期待できることなどを指摘して検察官に罰金処分にとどめられたい旨の希望を告げ、結果として罰金処分となりました。
なお、被疑者は医師であったため罰金処分後に厚労省の医道審議会の審議対象となりましたが、この点についても代理人として被疑者に有利な証拠と意見書を提出し、処分を回避することができました。
検察官に対し、被害者の要求額を告げて、弁護士として「被害者の要求額は不当である。被疑者には資力があるがこのような不当要求に応じるのは正義に反すると考えるがそれにもかかわらず示談締結までを求めるのか」という趣旨の問いかけを行いました。
検察官は、率直に被害者の要求額を「ふっかけすぎ」と評価し、検察官として不当要求に助力することはできないという意向を示したため、弁護人として示談締結未了であっても罰金程度にとどまるという確信を得て、その通りの結論となりました。